島に住んで釣をする

※広島経済スタートライン 2011年7月号掲載
ootoshi

かつて「2007年問題」というのがあった。いわゆる団塊世代(1947〈昭22〉年生れ~)が2007年から順次還暦、定年を迎え、そのことが世の中を大きく変えることになるだろう、というもの。閉塞的世相の中で、この「問題」はどちらかといえばその成行きに期待がもたれた。

 「2007年問題」の到来を前にして、リタイアした団塊世代が住みにくい大都会から脱出し始める(民族の大移動が起こる)のではないかという観測がさかんに行われた。とくに人口の減少が明確となり、社会・生活資源が余剰化(その前に老朽化)しつつあった地方は、地方自治体を含めて、団塊世代移住論を大いに歓迎した。そして、それを促すべくいろいろな運動や試みが展開された。

 そのひとつ、私も積極的に参加した企画は、JR呉線の駅近くにある空き地(さがしてみればそれなりのスペースが結構存在する)に良質低廉な住居を用意して移り住んでもらおう、というもの。

 交通、ショッピング、病院など生活環境・事情の調査、地権者への打診も一部行う一方で、東京で定年退職者のセカンドライフの充実を目指して活発な活動を行っているNPO法人の代表の方(10名)を招いて1週間かけて現地を視察してもらった。彼らのニーズとどのくらい合致するのかを知るために。見学を終えた彼らと意見交換したところ、ひそかに恐れていたとおり、当方の意気込みばかり先行して、要は空回りであった。

 先方がおっしゃるには、移住の条件は一応揃えてはあるがが、移住してみたいと心惹かれるものがない、と。明確な発言はなかったが、地元(コミュニティ)が喜んで受け入れてくれるかどうかの懸念もある、と。

 さらには移住に関してご夫婦の気持ちを合致させるのは至難の業である、とも。そして彼らの意見の大宗は、いきなり移住ではなく、まず来て住んでみる滞在、体験型を試行してみてはどうか、というものだった。当方、ギャフン状態だったが、思いがけない〝発見〟があった。

 それは、彼らは「島」にたいへん興味(というより憧れ)を持っている、ということ。安浦や竹原や大乗などの駅付近の移住可能地には大した関心は抱かなかったのに、観光で立寄った蒲刈上・下島、昼食とくつろぎの為に行った大崎上島での尋常でない興奮振り、自動車で移動中に見つけた大芝島へ渡り廃校舎をみて遠い昔を思い起こしているような素振り……。(大飛躍するけど)日本人は島が好きなのだ。前述の意見交換会の中で、あるご主人が「島はいいなあ、そこに住んで好きな釣を一生やっていたいよ」と。隣の奥様もその情景を想像して夢みる乙女になられたかと思いきや、ややあって小声で「東京のウチはどうするのよ」と、現実に戻った。

 しかし、考えてみれば、「島」は今まで人生をやった娑婆(陸)から隔たりを感じるし、「釣」も今まで時・分単位で動かされてきたビジネスの日々とは一線を画す所業である。多くの人々のセカンドライフを考えるうえで、島や釣は重要なキーワードになるのではないか。

 さて、「2007年問題」のその後であるが、あれから4年たち、団塊世代はめでたく還暦を迎えみんな60才を超えたが、この世の中、地鳴りするような大変動が起こっているようではない。団塊世代の有する「技能」が惜しまれ、「再雇用」等のかたちで実業の場にとどまっていて、完全リタイヤ状態になってはいないからであるが、世の中を大きく変えるマグマがなくなった訳ではなく、ちょっと先送りされているだけではないかと思っている。地方も島も釣もまだまだこれからである。チエを出し行動すればこの国は変わるし、面白いことが一杯ありそうだ。

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日本を代表する美しい砂浜 蒲刈・県民の浜 蒲刈は釣りのメッカだ。

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