高令化率日本一 呉炎2010.9

ヒロシマスタートライン 2010.9
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「石段の家 風」へ続く石段にて、作家・池端俊策氏(右)と。

 1年ほど前に、呉市の福祉行政の専門官の方から「これからのご老人のケアはなるべくご自宅でご家族がみるように、それが最も好ましく自然なことですから」というお話を伺った。そりゃそうだけどもチョット待ってほしい。老人ケアを「自宅で家族が」というのは昭和30年代までのことで、その後のわが国の考え方は「経済成長のために精出してくれ、そり代り老人のケアは政府がするから」へと転換したのではなかったのか。「自宅で家族が」は美しい言葉ではあるが、今になってそれを実行するのはたいへんに難しいなあ、と思っていたら―。

 先般、当地呉市の65才以上の高令者の割合=高令化率は28・2%(22/3時点)と、人口15万人以上の都市の中でトップということが呉市の調査で分かった、との報道があった。わが国全体の高令化率が22・9%だから、当地はかなり高い。また2020年のわが国の高令化率が29%と予想されているから、当地は約10年早くそれを「達成」しており、10年先を行く「先進」都市だと言えなくもない。

 当地の高令化率が高い理由、背景についてだが、そもそも××率という「比率」が曲者で、その比率は正しく評価するには分子と分母をそれぞれよく吟味する必要がある。高令化比率の分子は65才以上の高令者数、これは長寿化で増えているし、今後いわゆる「団塊の世代」が65才を超えればその増勢はさらに強まる。問題は分母で、即ち総人口が横ばいであれば高令化率は上昇するが穏当な範囲だが、当地の総人口は30年も前からジワジワと減少し続けており、分子の増加、分母の減少から高令化率は大きく上昇し、気が付けば日本一になっていた。ここでチョット考えてみると、当地は65才未満人口が〝大幅に〟減少している訳で、そのことが実は大問題であって、何とか65才未満人口の減少をくい止めること考えて有効な手をうたなくてはならないのだが―。

 話を転じて、当地に限らずわが国の高令化率上昇の中で一般的にみられる現象として、国民貯蓄にあける高令者(世帯)のウエイト増大がみてとれる。また高令者の貯蓄額自体も年々増加している気配がある。

別表
そうした状況は別表を見ていただくと明らかだが、これは日銀の金融広報中央委員会が毎年調査しているもので、サンプル調査であるうえ調査先が連続しているとは限らないので、断定的なことは言えないが、高令者の貯蓄の傾向はうかがえる。勿論あくまで平均してみたもので、すべての高令者がリッチマンである訳ではない。なお、ついでながら私の勤務する呉信用金庫の預金は近年100%以上高令者によって増やしてもらっている。

 さて、高令者の収入源は、事業収入、資産収入のある方もおられるが、大半は年金で、年金の一部を貯めておられる。消費を切り詰めておられる訳だが、年金の額もチョット多いということもあるかも(いや、平均的にみてということ!)。チョット多い部分を若手層に回せば(減税等で)、消費が増えて経済もチョット活気付く。そういうことは、みなさん内々分かってはいるが、手が付けられない。それによる「変化」が怖いから。

 しかし、これから高令化率がもっと上昇すれば現状のままでは、年金や医療費等の増大から財政(財源)がもたなくなる。冒頭の老人ケアは「自宅で家族が」はこうした事態を先取りしたものか。亊程左様に当地は全国に先駆けて高令化社会に突入していて、高令化への対応は行政や社会活動あるいは企業経営においても早くから実行されている(市営バスの老人パスなど40年前のこと)。成功例もあれば失敗例もあろうが、それらをドキュメント化して、他地域の参考に供するのも高令化率日本一の当地の義務かもしれない。
(22年8月25日 記)

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