呉炎 2010.9

※ヒロシマスタートライン 2010年9月号に掲載
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 学校を卒業する男子が3人。1人はグローバル君といって、中央の大企業に就職し、全国を転勤や出張で飛び回り、時には海外にも赴任した。グローバル君の仕事は主に輸出というかたちでわが国経済の成長、発展を主導した。彼は仕事に深いやりがいを感じ、自ら選んだ職業と歩んできた道に満足し自信を覚えている。人生の成功者である。

 もう1人はパブリック君。国(あるいは県市)の公務員として国(県市)のあるべき姿を企画し、微税し、予算をつけ、文字通り私利私欲を捨てエリートとしてわが国をリードしてきた。強い使命感と高いプライドを持っている。彼もやはり人生の成功者というべきだろう。

 3人目はローカル君。地元の企業に就職して、懸命に働いてその企業の技術、ノウハウを習得し、やがて「のれん」分けしてもらい(あるいは相続、継承し)、自らの創意工夫を付加してビジネスモデルを確立。地元の信用金庫に借金して工場、営業所を所有し、地元経営者として多忙な日々を送っている。ローカル君は地域経済の発展を支えているとの自負もあり、彼もまた仕事への大いなるやりがいと自らへの満足と自信を持った人生の成功者である。

 ところで地域経済を直接担っているのはローカル君だが、ローカル君の仕事はグローバル君のいる大企業からの受注であったり、大企業によって輸出されたりするので、グローバル君も地域経済とは無縁ではない。またパブリック君の仕事は予算執行を通じてローカル君の仕事を潤す。その代表が公共事業(をローカル君が受注・施工する)である。

 ここで地域経済、即ちローカル君の仕事は何によって構成されているか整理しておこう。
○ローカル君がつくる製品、サービスのうち地域内消費される部分(内需)
○グローバル君の大企業を通して→海外へ→輸出される部分(外需)
○パブリック君のところからもたらされる公共事業

 ここにおいて重要なことは、地域経済の真中にいるのはローカル君であり、グローバル君やパブリック君の存在感が強くローカル君の影が薄い時もあったが、それは本来おかしいことだと再確認しておくべきだ。
 男子3人の輝かしい人生(成功モデルといってもよい)は昭和時代にたしかに存在した。昭和時代には事業意欲に満ちあふれたローカル君がいた。しかし近年、様子が変わってきて地域経済の低迷が大問題になっている。地域経済を構成する○、○、○に次のような大異変が起こった。

○=消費構造の変化、人口の減少
○=新興国への仕事の移転(大企業からの受注単価は抑制されたまま)
○=少子高令化に伴う財政悪化から公共事業が大幅削減

 このため、グローバル君とパブリック君はそこそこやっているのに、ローカル君に元気がなくなっている。現に、地元企業の数は減少に転じて久しいが、減少の要因は事業をやめる先が増大しているのではなく、創業・起業が激減していることである(企業よ、お前も「少子化」か!)。

 では、ローカル君が蘇るにはどうすればよいのか。それにはいろいろなアプローチ、沢山の処方箋があるが、上の○、○、○に則して考えてみたい。

○→自らのビジネスモデルを今日の顧客環境の変化に対応するという観点から(自らの成功体験はしばらく横において)、真摯に見直してみることが第一。また当地の僥幸ともいうべき「大和ミュージアム」等への来訪者の増加を〝観光客〟として当地経済(の消費増)に取込む工夫と努力が絶対に必要かつ急務。

○→チープレイバーの新興国の及ばない製品、サービスへと高度化していくほかない。またこれまで大企業に依存してきた他地域・海外への移・輸出さらには海外での活動(現地化)を自ら手掛けることも考えたい。「アジアの需要」を取込むことがわが国の成長戦略といわれているが、それを誰がやるのか。地元企業が少し出ていってもよい。一方〝すぐれた〟モノ・サービスを作っていれば誰かが買ってくれるという時代ではなくなった。当地企業に販売力・営業力(顧客の創造・開拓)が付与されれば鬼に金棒。ここはひとつ地域経済の全体で〝金棒〟を手に入れる算段をしないと。

○→公共工事が以前のレベルに復する事は考えにくいが、公共インフラのみならず民間建造物も高度成長が始まった1960~70年代から急増しており、それらが経年劣化を来たしつつある。今後、計画的にそれらの保全・改修を行っていく必要がある(「コンクリートより人」とは、人が瓦解したコンクリートの下にならぬように、という意味に解すべきほどだ)。

 かくの如く、ローカル君にはションボリしている暇などない。新しい事業を拓き、起業し、これまでのやり残しやご乱業の後始末もあってタイヘンだが、地域経済を蘇らせるのはローカル君しかいない。いまやローカル君の仕事のやりがいは、グローバル君やパブリック君よりはるかに大きくなった。

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