呉経済MMインタビュー 八代恭宏氏(故人)、八代一成氏


※ヒロシマスタートライン 2010年9月号掲載

ベンダ工業の「海外進出成功事例」を徹底分析
キーワードは「強い信念」と「コミュニケーション」
国内生産拠点には「日本でしかつくれないもの」を!

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 コストの削減を命題とされる製造業では、いまや海外進出をしない企業は生き残れない、とも言われている。呉市内にも各国へ生産拠点を有する企業、また今後展開を計画している企業は多いが、その先駆けとなった企業がある。

 エンジン部品であるリングギアの製造メーカーとして世界トップシェアを勝ち取った、ベンダ工業㈱(呉市川尻町小仁方、八代一成社長)だ。

 「海外進出」について1980年代に成功させた「韓国進出時の苦労話」と「今後の海外展開ビジョンと国内生産拠点のあり方」について、ベンダ工業・八代恭宏代表取締役会長(故人、役職は当時)と八代一成代表取締役社長にインタビューした。

▼韓国に初進出されたときは?
会長「1980年代の初めでした。韓国進出の数年前からベンダは韓国へのリングギア素材の輸出を行っていました。そこへ現地企業から『技術提携』の話が舞い込んできました。」

▼当時の韓国進出事情は?
会長「進出当初の1980年代は韓国に進出した企業の10社中9社が失敗していました。わが社も、当初固有技術の使用料としてロイヤリティ契約を締結していましたが、約一年後、突然、信頼していた提携先に契約の解消を届出されてしまいました。
 その提携先の紹介者であった韓国大手企業の幹部の方が心を痛め新たなパートナーを探して下さり、韓国仁川市の有力企業であった、そのパートナー企業主体の合弁会社「ベンダ鮮光工業」設立に至ったのが1986年のことです。」

▼当時の韓国は?(治安や反日感情など)
会長「今でこそ世界でも最先端の文化と技術を誇る韓国ですが、当時は夜に出歩くのは恐ろしい、治安の悪い国でした。勿論、北の恐怖もありました。反日感情の意識もとても強く全てにおいて厳しかったです。」

▼どうやって信頼できる仲に?
会長「とにかく『相手を信頼する』『敬意を持って接する』という事です。相手に信頼してもらうには、まず自分が相手を信頼しなくてはなりません。そしてコミュニケーションをとって腹にためずにお互いをぶつけ合う。そして自分が相手を大切に思っているという事、信頼しているという事をアピールしなくては伝わりません。言葉の壁は大した問題ではないのです。」

▼仕事上で困ったことはございましたか?
会長「国民性が今とは全然違っておりまして。とにかく時間にルーズでした。これを徹底させることがとても時間が掛かりました。」
社長「えー?いまでは全然想像できません。」
会長「そうなんですよ。会議をしても現場のリーダーが遅れて出てくる感じだったんですよ。とにかく『時間を大切にしよう。時は金なり。』と繰り返し繰り返して浸透に苦労いたしました。」

▼韓国進出当初赤字が続いた?
会長「86年に設立して87、88、89と増資を続けましたが90年代の前半にパートナー企業が離れてしまい、ベンダ工業オンリーでの経営になりました。それでも赤字は続き創業者の先代会長の八代一芳に、私をはじめ弟の八代公治(副社長)、八代行雄(青島奔達汽車配件有限公司社長)は『撤退しましょう』と進言しましたが『帰りたければ帰れ、ワシはひとりでも残る』との答えでした。」

▼何故残ることに?
社長「ある程度の見通しはつけていたのですか?その後の円高を予測していたとか?」
会長「いやいや、先代会長の信念と迫力に従ったんです。ただ『この人に付いていけば大丈夫だ』という直感はありました。また『親父を1人で残せるか』という気概で3人がまとまりました。今思えばあの時もしも撤退していたら今のベンダ工業はありませんでした。」

▼この時の苦労が国内展開でも生きてきている?
会長「勿論、勿論。わが社は韓国進出した頃でも『ものづくりは良いものを造っていればお客は勝手にやってくる』というスタンスでした。私はそれを疑問に感じ『良いものを造ってもそれを広めなくてはならない』という気持ちで営業活動をたった一人で開始しました。」

▼今後の海外展開は?
社長「今日は会長の話が大変、勉強になりました。今後は中国を中心とした展開になります。生産拠点というだけではなく、成長著しい中国の自動車市場や自動車メーカーへ向けた販売戦略を打って出なくてはなりません。」

▼黒瀬に第二工場を建設中。
社長「国内の生産拠点も充実させていきます。特に質的なものを充実させます。日本でしかつくれないもの、日本にしか無い技術を生み続けていかなくてはなりません。リーダーシップを確立するためにも、新たな分野を切り拓く為にもです。」

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